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紫苑はクスと笑い、「安心しなよ。多分今日は、亜利紗と使用人しかいないから」と言いながら慣れた手つきで門柱のインターホンを押した。
十二月十日、土曜日。
明日は花衣と亜利紗の二十一歳の誕生日だ。
花衣は夕方から一砥とデートの予定で、亜利紗は亜利紗で家の祝いの席があるらしく、バースデー・イブの今日、一日早く誕生日を祝うべく、花衣と紫苑が亜利紗の自宅に呼ばれたのだった。
応対に出たメイドの案内で、二人は屋敷一階のサロンに通された。
広い窓から差し込む冬の陽射しの下、花衣と紫苑が紅茶を飲んで待っていると、身支度を整えた亜利紗が二階から下りてきた。
「お待たせ~。ごめんねー、ネイルがなかなか乾かなくってさぁ~」
「あんたに待たされるのはいつものことだから、別に気にしないよ」
紫苑が平然とした口調で言い、花衣はクスと笑って、「今日はお招きありがとう」と礼儀正しく挨拶した。
「うん。来てくれてありがとう。すごく嬉しい」
そう言って、亜利紗は主の座るソファに腰掛け、ゆったりと微笑んだ。
クリーム色のミニ丈ドレスを着て現れた亜利紗は、いつもより控えめなメイクではあったが、綺麗に巻かれた長い髪も爪先まで手入れの行き届いた肌も輝くばかりの美しさで、花衣はそんな友人を眩しい思いで見つめた。
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