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「まずはお祝いしようよっ。もう食堂にケーキを用意してるんだっ」
挨拶もそこそこに亜利紗はすぐに立ち上がると、戸惑う花衣の手を引いて一階奥の食堂に案内した。
その後ろを、紫苑がゆっくりとついて行く。
二〇畳ほどの広い食堂には、中央に十人掛けの長いテーブルが配置され、亜利紗の言う通り、その真中には三段重ねの豪華なバースデーケーキが用意されていた。
ケーキを囲むように焼菓子やゼリー、紅茶にフルーツポンチなどが並び、その隙間を美しいフラワーアレンジが飾った。
小学生の時に参加したクラスメイトの誕生日会を思い出しながら、「あれの超豪華版て感じだな……」と花衣は思った。
花衣自身は、自分の誕生日会など開いてもらったことは一度もない。
両親は共働きで忙しく、世話をしてくれた祖父母は「誕生日会」という言葉すら知らなかった気がする。
亜利紗は花衣と並んでケーキの前に座り、その向かいに紫苑が座った。
ケーキの上には二十一本のロウソクが立てられていた。
食堂にはケーキを作ったらしいシェフと、メイドが二名テーブル脇に控えていた。
亜利紗の合図でロウソクに火が灯り、使用人を入れた六名で「ハッピーバースデー」を合唱した後に、亜利紗と花衣は二人同時にロウソクの火を吹き消した。
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