第十一話「Happy Birthday」

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    5  たかがルームサービスと言っても、一流ホテルのそれは味も見た目も一流だった。  花衣はクラブハウスサンドと紅茶を注文し、生まれて初めてサンドイッチを食べた子供のように、「美味しい!」と仰天して叫んだ。 「うわ、これ、私の知っているクラブハウスサンドじゃない……」  具を確かめながらしみじみ呟く花衣を、一砥は静かな眼差しで見つめていた。  ダイニングテーブルで向かい合って取る遅い夕食は、無言の一砥と、気まずさを隠すように独り言を呟く花衣、という、微妙な空気の中で粛々と進んだ。  空腹だった花衣はすぐに皿を空にし、紅茶もあっと言う間に飲み干してしまった。  向かい合った男の皿にはまだ半分料理が残っており、ワインも同様に減っていないことを確認し、花衣は遠慮がちに「あの、紅茶のお代わりと、デザートも頼んで、いいですか……」と訊ねた。  一砥は小さく、「ああ」と答えた。  彼の言葉少なな態度を、自分への抗議の現れと感じつつ、花衣は敢えて追加の注文をした。  いつでも正直でいろ、と言ったのは一砥だ。  ならばこのまま本音を押し通そう、と思ったのだ。     
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