第十一話「Happy Birthday」

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 ケーキと二杯目の紅茶ですっかり満足し、花衣は「これからどうするのかな」と言う疑問を乗せて、同じタイミングで食事を終えた一砥を見た。  すると一砥は腕の時計をチラと見て、「そろそろ休もう」と言った。  花衣が時間を確認すると、午後十時を回ったところだった。  いつもよりずっと早い就寝だったが、仕方なく彼に従って、歯磨きを済ませてベッドに入る。  寝室のベッドは大人が三人寝ても余裕な広さの、キングサイズだった。  花衣が左からベッドに上がると、一砥は右から上がった。  そのまま仰向けに寝ても、キングサイズのダブルベッドゆえに、わざと手を伸ばしでもしない限り、指先すら掠りもしない。  明かりの絞られた室内で、花衣は無言で天井を見上げた。  相手から何か仕掛けてくれるのを待ったが、一砥が動く気配はない。  恐る恐る隣を見た花衣は、同様に仰向きに横になった一砥を見て、その瞼が閉じられていることに絶望的な気分になった。 (やっぱり一砥さん……凄く、怒ってる……)  全て自分が原因だと分かっていても、いつも優しく情熱的に愛してくれる恋人に、ここまで素っ気ない態度を取られると、さすがにダメージは大きい。     
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