第十一話「Happy Birthday」

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 自業自得だと己を責めても、せっかくの誕生日があまりに悲惨な結果となりそうで、花衣の中で、あのタイミングでオーディションの話題を持ち出した一砥を、恨みたい気持ちが沸々と湧いて来た。  だがここで相手を責めては、事態はもっと悪くなる。  もし険悪な雰囲気がさらにこじれ、誕生日に破局なんてことになれば、自分は一生立ち直れないだろう。  そう考えて、花衣は自分もぎゅっと目を閉じた。涙が滲んだが、己を叱咤し無理矢理止めた。  そして夢の中に逃避することを決めた。        *****  昨晩あまり眠っていなかったせいか、意外に早く睡魔は訪れ、花衣はいつしかぐっすりと眠り込んでいた。  ベッドの反対側で小さなアラームが鳴り、その幽かな電子音に、意識が緩やかに現実へと還って来る。 (もう朝なのかな……)  さほど寝た気がしないが、ショートスリーパーの花衣は、数時間寝てすでに睡眠は足りていた。  寝返りを打ってうっすら目を開くと、サイドランプが一番絞った状態で点いており、しかしそのオレンジの明かりの中、ベッドはもぬけの殻だった。  一瞬動揺し身を起こそうとしたところで、ドアが開いてパジャマ姿の一砥が戻って来た。  ホッとして、花衣は咄嗟に目を閉じ寝たふりをした。  何か意図があって狸寝入りを決め込んだわけでなく、なんとなくまだ顔をまともに見るのが気まずかった、それだけの理由だった。     
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