第十一話「Happy Birthday」

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「いいよ。今は泣きたい気分なんだろう? 好きなだけ泣いた後に、また笑ってくれたらそれでいい」  花衣はまた「うっ……」と詰まって、「そうやって、一砥さんがわざと泣かせてるんですよぉ~~~」と号泣した。  そしてまた、わぁんと声を上げ、一砥の胸で子供のように泣く。  まるで、尊い禊(みそぎ)のように。  一砥の言葉と態度は、花衣の心に溜まった汚泥を流し清め、その奥に仕舞われた純粋で真っ直ぐな素顔を引き出してくれた。  ひとしきり泣いた後で、花衣はティッシュで盛大に鼻をかみ、照れ臭そうに小さく笑った。 「何だか私、一砥さんに出会ってから、一生分の涙を流している気がします」 「それは、俺が悪いのか?」  シーツの上で憮然と胡座を組む一砥を見つめ、花衣は「いいえ」と笑顔で首を振った。 「悪くないです。むしろ、泣けば泣くほど、私、自分を好きになれる気がするから……、すごく感謝しています」 「そうか……」  一砥は目を細め、やおらサイドテーブルに置いた包みに手を伸ばした。 「じゃあこれを渡したら、また泣かせてしまうかな」 「え?」 「誕生日プレゼントだよ。開けてみて」  乞われるように言われ、花衣は素直にリボンと包装紙を解いた。     
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