第十一話「Happy Birthday」

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 四つの拍手が起こり、亜利紗と花衣は顔を見合わせてニッコリと笑った。  ケーキが取り分けられて、花衣は高級洋菓子店に負けない見た目と味のケーキを美味しく頂戴した。  甘い物は苦手という紫苑が、早々にフォークを置いて、「それにしても……」と独り言のように言った。 「亜利紗も随分と変わったね。去年まではクラブを貸し切って一晩中騒いでってのが定番の誕生日だったのにさ」 「えっ、そうなんだ……」  驚いて花衣が隣を見ると、亜利紗は澄まし顔で「去年は記念すべき二十歳の誕生日だったから、ちょっと派手にしてみただけよ」と答えた。 「あんた、二年前も三年前も同じ祝い方だったじゃん」 「……だから、まあ、そういうガキっぽい馬鹿騒ぎは、二十歳で卒業したのよ」 「へえ。亜利紗も大人になったもんだ」 「だからっ、もう大人だってば!」  いつも通りのコントのように絶妙な二人の会話を聞きながら、花衣はクスクス笑った。  そして持参したプレゼントを思い出し、「あ。そうだ、亜利紗。これ、誕生日プレゼント……」と、紙袋から小さな包みを取り出した。 「わあ、ありがとう!」  笑顔で受け取り、早速包装を解き始めた相手に、花衣は慌てた口調で「あの、全然大したものじゃないから……」と言い訳した。     
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