第十一話「Happy Birthday」

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 造花付きリボンの飾られた紙袋から出て来たのは、ペアのレザーブレスレットだった。  牛革のベルト部分は赤と焦げ茶の色違いで、飾りプレートにはそれぞれ「with S」「with A」と文字が彫られていた。 「これってもしかして……」  赤いブレスレットに彫られた「with S」の文字を見つめながら、亜利紗が呟く。 「う、うん。赤が亜利紗ので、茶色い方は奏助さんのなの……。お揃いで作ってみたんだけど、どうかな……」 「えっ、これ手作りなのっ!?」 「へえ、凄いな」 それまで関心薄く聞いていた紫苑も、身を乗り出して亜利紗の手にある二つのブレスレットを見つめた。 「本革で作ってあって、本格的だね。花衣ってこんなのも作れるんだ」  紫苑の言葉に、花衣は笑顔ではにかんだ。 「そんな、全然大したものじゃないけど……。私、このくらいしか出来ないから……」 「そんなことないよっ!」  いきなり亜利紗が大声を出し、花衣と紫苑はびっくりして顔を上げた。  亜利紗はプレゼントを両手に掴んだまま、「花衣、このプレゼント、すごく嬉しい……。泣きそう……」と、本当に今にも泣き出しそうに顔を歪めた。 「ええっ、なんで!」     
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