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花衣からすれば、本音を言えばセンスの良いブランド品でも贈りたいところだったが、自分が買えるレベルの物など逆に中途半端で亜利紗に失礼だと感じたからこその、敢えての手作り品だった。
一生懸命心を込めて作った品ではあるが、手作りという貧乏臭さを消すことは出来ないし、亜利紗と奏助に似合うハイセンスなものを作れたという自信もない。
だが亜利紗は、今にも泣きそうな顔で感激し、プレゼントをテーブルに置くと両手で花衣の手を握った。
「花衣の手作りなんて、本当に嬉しい。絶対に大切にするね……」
「え、うん。そこまで喜んでもらえると、私も嬉しい……」
戸惑いつつも花衣は、亜利紗がここまで喜ぶ理由が、なんとなく分かるような気がした。
彼女の周りはいつも、“最高級の品”で埋め尽くされている。きっと子供の時からそうなのだろう。
花衣は幼稚園や小学校時代、道具箱袋や巾着、名前シールの貼られた筆箱や習字道具など、祖母や母親の用意してくれた手製のものが周りにには溢れていた。
入学式に着たブレザーは、父が仕立ててくれたものだ。
遠足や運動会で食べるお弁当も手作りで、花衣の好きなおかずを沢山詰めたものばかりで、三角むすびにはオカカと昆布が必ず入っていた。
庭で遊ぶ時、祖父が竹馬や竹とんぼを作ってくれた。祖母は小豆入りのお手玉を。
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