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単に邪魔だ、という理由のみで……。
その点、わたしは母に殺されずに育ったのだから幸運だろう。そう思うしかない。
母がわたしを殺さなかったのは、わたしが母に必要だったから。例えば科学の進歩で兄の病弱が克服されたら母はわたしを殺すかもしれない。いや、それは単に親に愛されなかった子供の願望か。実際は母がわたしを無視し、いずれ家から追い出すだろう。溺愛する息子と水入らずで暮らすために……。
そんな母は高名な作家。作家の前はピアニストだが、わたしの兄と離れて暮らすのが厭で演奏公演を止める。母のピアノにはパトロンがあったから、数人のパトロンのため、自宅で演奏会をすることまでは止めていない。
その後の生計は、それまでに稼いだお金の資産運用で行う。バブルの時代ならば失敗して無一文になる可能性もあったが、母は上手く乗り切ってしまう。が、それは母の才能というより、母が資産運用を任せた父方の叔父の才能だろう。
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