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わたしの兄は誰にでも優しく、分け隔てがない。足腰が弱いので動きは常人に劣るが、それを覆すような明るさがある。兄のそういった人格的なモノは子供心にも通じたようで、病弱で学校を休みがちではあったが、クラスの誰からも虐められない。子供は残酷な生物だから弱い者虐めが大好きだというのに……。あるいは、わたしが知らないところで兄は虐められていたのだろうか。そう考えると不安になる。当然、兄は態度に示さない。だから、わたしには見抜けない。もしかして、そういう真相だったのだろうか。わたしは子供の頃の兄の身体に病気以外の傷を見たことがないが……。
例えば、虫刺されなどが原因で兄が皮膚炎に罹れば皮膚が醜く腫れ上がる。が、それは虐めの打撲痕とは異なるだろう。いや、それさえも虐める側の巧妙な手口で、わたしには皮膚炎にしか見えなかった兄のあの傷跡は実は虐めの証だったのだろうか。そういえばある時期、兄は皮膚炎を繰り返したことがある。兄はすべての病気と親和性があるので短い期間に皮膚炎を繰り返しても不思議はないが、もしかしらたあの時期、兄に対する虐めがあったのかもしれない。けれども、わたしは気づけない。仮にそんな事実があったとしたら、わたしは兄の介護者失格だ。本当に、もしそんな事実があったのだとすれば……。
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