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随分前から知り合いだったけれど、こんな風に2人きりで会うようになったのは本当に最近で、まだ慣れない。
ただの仕事での知り合いで、長らく想いを寄せてはいたけれど、この想いが成就する日が来るとは思っていなかった。
想像の中では幾度となく考えはしたものの実際にこういうシチュエーションになったら頭が全く働かない。
正直、あの日私の事を好きだと言った彼の言葉がまだフワフワとしていて現実味がない。
取り立てて美人な訳でも仕事が出来るわけでもない自分の一体どこにその要素があったのか私が一番困惑していた。
ただ、ずっとひっそりと育んでいた気持ちにはどうも気づいていたようで、なぜ?と問うた私に「だってずっと俺のこと好きだったでしょ?」と至極当たり前のように言われればなにも返す言葉がなかった。
今思えば、気持ちを寄せられることには慣れているはずの彼に、そんな事が理由になるのかよくわからない。
悪戯に騙されているのかもしれないという思いを捨てきれなかったけれど、ずっと燻っていたこの想いを昇華できるのならば、いっそそれでもいいのかもしれないと思った。
一時幸せな夢が見られるならその後どんなに大きな傷を抱えるかもしれなくともその夢を見てみたいと。
そして少しでも長くその夢の中にいたいと思いながら、早く醒めてその傷を最小限に食い止めたいと今更なことを思う相反する感情が私の中に同居していた。
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