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あの夢のような日と同じように彼は私に「好きだよ」と言って、あの日言えなかった「私も大好き」という言葉を何のためらいもなく返してフワフワした気持ちで満たされる。
鼻先や頬をくすぐられて目を開けると微笑む彼の顔がある。
その満ち足りた気持ちのまま彼の首に抱きつくと、
「わっ!」とバランスを崩して私の上に覆い被さるようにして両手を顔の横についた。
「大胆だな。」
その衝撃と呟きで頭が覚醒する。
思わず体をひくと、膝をついて体を起こした増田さんと目があった。
「ぷっ、」と吹き出すとハハハと笑っている。
「なに、その顔。襲われたのおれの方なんだけど。」
と尚も笑っている。
「え、あの、そんな変な顔してますか?」
そう言って顔を手で覆うと途端に恥ずかしさが込み上げてくる。
「寝ぼけてたみたいで、本当にすいません。」
「どんな夢見てたの?すげー幸せそうな顔してたよ。」
「いや、それは…。」
と答えに窮していると、ソファの空いたスペースに座ったので、慌てて体を起こす。
「風呂上がったらソファで寝てるんだもん。疲れてる?」
顔を上げると指先が私の前髪をはらってそのまま親指で唇を辿る。
「もう寝ちゃう?」
そう優しく囁く声と、額の前で分けられた赤く透ける前髪からひと粒雫が溢れて、その奥の熱のこもった瞳がなんとも色っぽく美しくて見惚れてしまった。
そんな私に笑いかけて
「とりあえず寝室に行こうか。こんなとこで寝てると体が痛くなるよ。」
そう言って立ち上がった。
私もはっとして背中を追いかける。
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