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暗闇に慣れた目で辺りを見渡せば、京都特有の低い家屋が所狭しと並んでいる。
それだけを見れば大した疑問にも思わなかったのだろう。
一歩足を踏み出せば、整備のされていない砂利道が足裏を通じて現実を突きつけてくる。
電柱。
街灯。
人の気配。
一瞬のうちに消え去ったものを上げればきりがなく、混乱する頭は正常に機能することを拒否している。
「…………は?」
意図せず口から出た言葉に反応するものは無く、ただ生暖かい風が頬を撫でる。
この少女、鈴木五十鈴(すずきいすず)は今、目の前に起こったことを理解できていなかった。
今日この日、20歳の誕生日を迎えた五十鈴は実家で行われた家族だけの誕生日パーティーを終え、初めてのアルコールで浮ついた気持ちを冷まそうと夜の散歩に出たのである。
夜といっても街灯が設置されている住宅街。
明かりに困ることなく、どこからか聞こえてくるテレビの音や和やかな話し声を頭の隅で聞きながら、鼻歌交じりにいつもの散歩コースへを歩いていた。
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