諦ましたよどう諦めた 諦めきれぬと諦めた

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ただ一つ、いつもの散歩と変わったことと言えば、アルコールが入って陽気になったせいか道にあるコンクリートのくぼみに運悪く足を引っ掛けてしまい、盛大に転んでしまったことである。 咄嗟に手をついたものの、予想していたものとは少し違う痛みに違和感を感じ、恐る恐る顔を上げると、目に入る全ての景色が一瞬にして変化していた。 背の低い家の影は似ているが、材質や軒先きにでている物が違う。 コンクリートと思ってついた手の先は、少し柔らかさのもつ砂利道。 街灯なんてものはなく、薄気味悪いほどの綺麗な満月が自分を照らし、くっきりと影を落としていた。 慌てて立ち上がり、後ろを確認する。 それでもやっぱり今自分が歩いていた道の面影など無くなっていて、目の前に広がるのはテレビや友人達と行った時代村で見たような古臭い景色。 幻覚を見るほどアルコールって強いのか。なんて自分で思ってみたものの、そんな作用など無いということは、いくら今日初めて酒を飲んだからとはいえ、知っていた。
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