episode240 倒錯と狂気の進む先 ②

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観念したら余計な力が抜けて (開いたっ……) バルコニーへ通じる鍵が開いた。 「お姉様……これ以上僕を追い詰めるとあなたの為になりませんよ」 後ずさりでバルコニーへ出ながら 僕は警告のつもりで指を突き立てた。 「僕が抵抗しないのは、身重のレディー相手に手荒な真似したくないからだ」 強い風に髪が煽られる。 「なら大人しく殺られるがいいわ」 聞く耳なんて持ってないって――? 貴恵の長い髪はほぼ全部逆立って 一層人間味を欠いた形相で僕に近づいてきた。 そして――。 「あんたが大人しくあの世へ行けば九条敬を生かしといて上げる。どう?」 「え……?」 フェアな取引のつもりか。 無茶苦茶な要求を押し付けてくる。 「そんなバカなこと……」 頭では分かっていたけれど。 僕は躊躇した。 心から九条さんを愛していたから――。 「ウッ……!」 その躊躇が一瞬の隙を作った。
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