episode240 倒錯と狂気の進む先 ②

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咄嗟の事に言葉はなかった。 僕を見下ろす拓海は ちょっとばかり愛しい人に似た目元を赤くしていて。 「拓海っ……!」 全てを吹っ切るかのように僕を跨いで走って行った。 残されたのは 凶悪な内緒話を聞かれた女と 命を取られるほど恨まれている僕だ。 おまけに――女としての誘惑に失敗した上。 一番知られたくない相手に 九条敬に未練がある事を知られてしまったのだ。 プライドの高い女王様にとって これ以上の屈辱はなかった。 僕は――怒ればよかったんだ。 殺人鬼だ人殺しだと貴恵を罵れば。 そうすればまだ救いようはあったかもしれない。 でも 「お姉様……なんだか……ごめんなさい」 僕は謝ってしまった。 「なんですって……?」 こんな時に限って えらく素直に。
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