episode240 倒錯と狂気の進む先 ②

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貴恵の口元が歪んで不自然に笑みを作った。 歯を食いしばったまま笑ったような怪奇的な笑みだ。 妊娠でホルモンバランスが崩れたせいだろう。 口元には隠しきれない醜い吹き出物ができていた。 ガウンが翻る。 妊婦とは思えぬスピードで貴恵は一旦書庫の奥へと姿を消した。 「お姉様……?」 さすがに恥じ入って身を隠したか。 僕は油断した。 この時、立ち上がってさっさと逃げ出せば 先に待つ大惨事を免れたかもしれないのに――。 だけど僕はそうしなかった。 天宮和樹はいつも愚か者なのだ。 好奇心旺盛な猫のように 危険の大元を確かめずにはいられなかった。 身を起こすと僕はそっと書庫の扉に手をかけて 中を覗き込んだ。
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