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「キエエエエエァァァ――!」
その時だ。
悲鳴とも獣の戦慄きともつかない声と一緒に
貴恵が飛び出してきた。
常軌を逸した
まさしく嫉妬に狂った女鬼の顔つきで。
寸でのところで僕は扉の後ろに身を引いた。
が――。
鋭利なペーパーナイフの刃先が
前髪すれすれを掠めて額に鋭い痛みが走った。
「私は……あんたが嫌い……」
地を這う虫のようにざらついた
不快な低い声が言った。
「あんたが大嫌いよ……和樹っ……!」
呻くように唱えながら
貴恵はペーパーナイフを両手で握り水平に構え直した。
「お姉様……」
助走をつけ右足を一歩引く。
「お姉様……やめて……!」
「イヤァァァァァーー!」
今度は本気で
僕を刺し殺す気で来た。
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