episode240 倒錯と狂気の進む先 ②

25/30
前へ
/30ページ
次へ
僕は逃げ出した。 正面からぶつかって勝てない相手ではないが なんせ相手は妊婦だ。 とにかく逃げるが勝ちだと思った。 廊下の先の先。 目指す場所なんて考えていなかったけれど。 ドスドスとすさまじい足音が迫ってくる。 体重の増加などもろともせず 光る刃先は執拗に僕に追ってきていた。 恐怖と驚愕で眩暈がする。 廊下の角を折れた先に現れたのはバルコニーに続くドアだった。 普段は使わない。 固く鍵がかかっていた。 あとは行き止まりだ。 「お待ちなさい……和樹っ……!どうして逃げるのよ?」 指が汗で滑って鍵が開かない。 「クソッ……」 そうこうしているうちに どんどん距離が縮まっていった。 「あら、ここが墓場」 息を切らす僕を貴恵がせせら笑う。 毟られた黒い羽が暗い花道を歩く女王の上に舞い散った。 ついに追い詰められた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加