episode240 倒錯と狂気の進む先 ②

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貴恵は僕の脚を狙って ペーパーナイフを突き立てた。 「そんなにあの人が大事?命よりも?」 傷は浅くとも まずは獲物の動きを封じるためだ。 「汚らわしい浮気者のクセに!」 バルコニーの手すりに背中がぶつかる。 つまり もう逃げ場はないわけだ――。 刺された腿から血が滲んだ。 「汚らわしい?弟と夫を殺めようとしているあんたがよく言う!」 興奮しているからか 痛みより焼けるような熱さを覚えた。 「憎んでんのは僕だけだろ?あの人のことは愛してるんだ!」 「黙れ!黙れ!黙れ!」 貴恵はなりふり構わず叫んだ。 だけど――黙れと言われて僕が黙った事は? 「ホントはあの人の子供が欲しかったんだ。なのに哀れだな!見向きもされないから弟の子を身籠った!」 この時鏡を見れば 僕も姉と似たり寄ったりの悪魔だったと思う。 脚に穴をあけられた分 心底意地悪く最も深い心の傷を抉ろうとしていた。 「本当に――殺して欲しいのね」 当然のことながら ついに女王様の怒りは沸点に達した。
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