episode240 倒錯と狂気の進む先 ②

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振り上げた刃物が何度か宙を切る。 僕はかろうじてかわして最後の逃げ場を探した。 最後――いや運が悪きゃ最期の逃げ場かもしれない。 足の痛みをこらえて それでも遠慮がちに妊婦の肩先を蹴り上げると。 「クァッ……!」 貴恵がよろめいてバランスを崩している間に 背後の手すりを跨いだ。 「あら?飛ぶの?」 体勢を立て直すと貴恵は挑発的に笑って 「下はコンクリートよ。痛っいわよー」 はるか下まで覗き込んだフリをする。 「2階だもの。死にはしないさ」 「そう?でも身体の骨がバラバラになるかも。叩きつけられて唯一の取り柄の顔も潰れるかもね?」 恐怖心を煽る言葉を並べ立て 再びナイフをきつく握り直した。 「構わないさ――あんたに嬲り者にされるぐらいなら」 どちらにしろ悲惨な結末を迎えるなら。 もうこれ以上考える必要はなさそうだ。 一か八か――飛び降りるしかない。 覚悟を決めて僕が階下を覗き込んだその時だ。 「和樹っ――!」
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