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バルコニーの真下に征司がいた。
「征司お兄様っ……!」
門の外に目をやれば
愛車のベントレーが斜めに乗り捨ててある。
きっとバルコニーで繰り広げられている
ホラー映画さながらの異常事態に気付いて駆けつけて来たんだ。
と――。
よそ見してる間に
「落ちろ!」
「うぁっ……!」
貴恵のナイフが手すりを持つ僕の手を掠め
僕は大きくバランスを崩した。
「和樹っ……!」
征司が叫ぶ。
後ろ向け真っ逆さま転落する寸でのところで
僕は手すりを握り直しなんとか持ち堪える。
「貴恵……?貴恵なのか……?」
そこでようやく。
階上の殺人鬼が
他でもない双子の妹だと分かったんだ。
「なんでっ……!?」
こんな時なのに笑えるぐらいあんぐりして
征司は両手を開いた。
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