episode240 倒錯と狂気の進む先 ②

3/30
前へ
/30ページ
次へ
『盗られたって――誰にですか?』 僕は昨夜の話の続きを思い出していた。 『貴恵さ』 征司はサラリと答えた。 『あいつ、腹が出てきたからサイズの合うガウンがないとか言ってたが――本当は初めから狙ってたんだろうな』 話題の新鋭デザイナーのガウンだ。 そうして妊婦は征司のワードローブから 意気揚々とそれを拝借していったという。 「それじゃあの夜見てたのは貴恵お姉様だ……」 僕は一人爪を噛んでごちた。 「たしかに君のお兄様たちには、君に向けて恨の愛と違わぬ感情がある。でも今俺が感じているのは――」 ジュンが大仰に身体を震わせる。 「そうでしょうとも」 その続きは聞かなくとも分かった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加