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『盗られたって――誰にですか?』
僕は昨夜の話の続きを思い出していた。
『貴恵さ』
征司はサラリと答えた。
『あいつ、腹が出てきたからサイズの合うガウンがないとか言ってたが――本当は初めから狙ってたんだろうな』
話題の新鋭デザイナーのガウンだ。
そうして妊婦は征司のワードローブから
意気揚々とそれを拝借していったという。
「それじゃあの夜見てたのは貴恵お姉様だ……」
僕は一人爪を噛んでごちた。
「たしかに君のお兄様たちには、君に向けて恨の愛と違わぬ感情がある。でも今俺が感じているのは――」
ジュンが大仰に身体を震わせる。
「そうでしょうとも」
その続きは聞かなくとも分かった。
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