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「九条との愛の為に死ぬんですって!」
最後の嫌がらせとばかり
階下の征司を覗き込み貴恵は告げ口した。
「なっ……!」
こんな状況で馬鹿らしいけれど
その一言は確かに僕に一番ダメージを与えた。
「僕はっ……」
膝が震える。
言い訳したい。
今すぐにでもあの人の前に跪いて醜い言い訳をしたい。
征司と視線が交わる。
僕はただ無意味に首を振った。
「アアッ……!」
「和樹っ……!」
貴恵が再び僕の腕を狙って刺してきた。
もう何もかもが限界だった。
そんな時だ――。
「飛べ!」
征司が鋭く叫んだ。
「俺が絶対に受け止めてやるから――」
こちらに手を伸ばしてあの人が僕に命じる。
「俺の上に飛べ!」
僕がお兄様の命令に逆らったことがあるかって?
逆らうべきだった。
常識で考えてそんな事したらどうなるか。
分かるだろ?
分からないお馬鹿さんは僕と一緒に次の地獄へ行こう。
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