episode240 倒錯と狂気の進む先 ②

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あの夜――貴恵が見てたんだ。 神がかって美しい絶世の美男子。 少女の頃から夢見ていた王子様そのもの。 完璧な夫となるはずだった男――。 その彼がありったけの愛をこめて 世界で一番憎い義弟を抱いているところを。 それも一人で見ていたんじゃない。 何の因果か。 愛する男の弟の子をその腹に宿して 四つの瞳で――僕らの情事を覗いていた。 あるいは九条さんは本当に言ったのかもしれない。 『貴恵が子供を産んだらその子を攫って2人で育てよう?』 『僕ら一緒に生きていくんだ。幸せな家族として』 『どうだい?僕と君と子供――永遠に愛するよ。ね、完璧な人生だ』 夢の中の台詞かと思っていたけれど もしかしたら本当に――。 だって僕の中で絶頂を迎える男に ――それがたとえ九条敬だとしたって―― 理性なんかこれっぽっちも残っていやしないのだから。
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