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あの夜――貴恵が見てたんだ。
神がかって美しい絶世の美男子。
少女の頃から夢見ていた王子様そのもの。
完璧な夫となるはずだった男――。
その彼がありったけの愛をこめて
世界で一番憎い義弟を抱いているところを。
それも一人で見ていたんじゃない。
何の因果か。
愛する男の弟の子をその腹に宿して
四つの瞳で――僕らの情事を覗いていた。
あるいは九条さんは本当に言ったのかもしれない。
『貴恵が子供を産んだらその子を攫って2人で育てよう?』
『僕ら一緒に生きていくんだ。幸せな家族として』
『どうだい?僕と君と子供――永遠に愛するよ。ね、完璧な人生だ』
夢の中の台詞かと思っていたけれど
もしかしたら本当に――。
だって僕の中で絶頂を迎える男に
――それがたとえ九条敬だとしたって――
理性なんかこれっぽっちも残っていやしないのだから。
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