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「本当のところが分かったから、僕行きます」
自分で言うのもなんだけど
僕としては珍しく
「どうしても?」
「朝早くにすみませんでした」
甘い誘いの手を一切寄せ付けなかった。
さすがに気分ではなかったし
これ以上の面倒事はごめんだった。
「で?これからどうするつもり?」
椎名涼介の至極的を得た質問に肩をすくめて見せる。
「さあ。でも一度よく考えてみます」
考えなしにここまで来た。
だけど今回ばかりはきっと
考えざるを得ないだろう。
そんな気がした。
「これ――君にやるよ」
今生の別れのような顔をして
ジュンは首から下げていたエスニック調のネックレスを外すと。
「いざって時のお守りだ」
僕の頭からすっぽり被せてくれた。
「ありがとう。いかにも身を助けそう」
小さな鏡のように朝日を反射するそれを
僕は首筋からシャツの中にしまい込んで椎名邸を出た。
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