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episode240 倒錯と狂気の進む先 ②
翌朝とも言えない――もっと早い時間。
太陽が昇るのと同じ頃あいに
僕は椎名家の門を叩いていた。
「なんて時間に来るの?」
「ごめんなさい。でも本当はもっと早く来たかったくらいなの」
寝込みを襲われた椎名さんは
チェックのパジャマに無造作に寝ぐせ頭を掻きながら
「まあいい。君ならいつでも歓迎する。おいで」
僕を屋敷に招き入れた。
「あ……」
驚いたのは
予知能力があるはずの魔法使いの方で。
「おい、なんの準備もない時に君に会いたくない!」
先日の妖狐のような姿とはうってかわって
今朝は何の装飾もない。
切れ長の涼しげな瞳をした素顔と
寝間着代わりのよれたタンクトップから
タトゥーの刻まれた形のいい腕が覗いている。
「昨夜の電話の話――」
僕が切り出したところで2人は顔を見合わせた。
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