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ある晩、いつものように深夜、男が家に帰ると、キッチンのシンクに汚れた食器が積み重なり、一部は崩れ落ちて排水溝の穴に嵌っていた。
男は嘆息し、寝巻き代わりにしている安物のジャージに着替えると、風呂にも入らず歯も磨かず、そのまま寝室の布団に潜り込んだ。
隣では妻と、相変わらず具合の優れない娘とが横になっている。ふと、眠り込んでいたと思っていた妻が口を開いた。
「ねえ、あなたも早苗の面倒みてよ。私、もう、これ以上仕事休めないよ。」
「あー、もういいだろ、その話は。俺の方が忙しいんだよ。急に休めるか。何度も言ってるだろ。大事な仕事が溜まってんだよ。お前はしばらく休んだところで何とかなるだろ。」
「私だって、これ以上会社に迷惑かけられないよ…」
「それより、食器ぐらい洗っておけよ。汚なくしてるから、いつまでも早苗の腹が治らないんじゃないのか?」
妻が二言三言何か言ったような気がしたが、それ以上耳を傾ける気にもならず、男は眠りに落ちてしまった。
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