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「おい、平澤!」 ガヤガヤとうるさい教室の中、 突然呼ばれた名前にビクッとして振り向けば、 そこに居たのは取っ組み合いをしてはしゃぐ男子で。 「びっくりしたあ・・・。」 驚きが声に出てしまった私。 隣では実咲(みさき)がうんうん、と頷く。 「同じ名字って紛らわしいよね。」 「本当。いつもびっくりしちゃう。」 どうやら名前を呼ばれたのは同じクラスの平澤くんのようだ。 反応してしまったことに恥ずかしさを覚えると共に、 よく分からない虚しさに襲われた。 私はもう躊躇いなく返事ができるんだ、なんて。 「そういえば今日3組に転校生が来たんだって!」 「へー、男子?女子?」 「男子らしい!しかもイケメンらしいよ!」 見に行こ!そう言って実咲は私の手を引っ張る。 メンクイなんだから、と心の中で苦笑しつつも 彼女のあとへついて行く。 「ほら、あの人!」 「どれどれ?」 ド田舎に位置する私の高校は、 転校生がくることは滅多になくて。 転校生が来る度大騒ぎになるのだが、 今回はいつもよりも野次馬の人数が多い気がする。 実咲が指さす方向を見れば、 教室の中心で談笑している転校生。 ・・・一瞬、時が止まった気がした。 「あんまりよく見えないな~。」 うるさく鳴り始めた心臓を必死で抑える。 幸い実咲はそんな私に気づいた様子はなく、 背伸びをしながら教室の中を覗いていて。 なんで、彼がここにいるんだろう。
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