0人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい、平澤!」
ガヤガヤとうるさい教室の中、
突然呼ばれた名前にビクッとして振り向けば、
そこに居たのは取っ組み合いをしてはしゃぐ男子で。
「びっくりしたあ・・・。」
驚きが声に出てしまった私。
隣では実咲(みさき)がうんうん、と頷く。
「同じ名字って紛らわしいよね。」
「本当。いつもびっくりしちゃう。」
どうやら名前を呼ばれたのは同じクラスの平澤くんのようだ。
反応してしまったことに恥ずかしさを覚えると共に、
よく分からない虚しさに襲われた。
私はもう躊躇いなく返事ができるんだ、なんて。
「そういえば今日3組に転校生が来たんだって!」
「へー、男子?女子?」
「男子らしい!しかもイケメンらしいよ!」
見に行こ!そう言って実咲は私の手を引っ張る。
メンクイなんだから、と心の中で苦笑しつつも
彼女のあとへついて行く。
「ほら、あの人!」
「どれどれ?」
ド田舎に位置する私の高校は、
転校生がくることは滅多になくて。
転校生が来る度大騒ぎになるのだが、
今回はいつもよりも野次馬の人数が多い気がする。
実咲が指さす方向を見れば、
教室の中心で談笑している転校生。
・・・一瞬、時が止まった気がした。
「あんまりよく見えないな~。」
うるさく鳴り始めた心臓を必死で抑える。
幸い実咲はそんな私に気づいた様子はなく、
背伸びをしながら教室の中を覗いていて。
なんで、彼がここにいるんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!