題名のないおとぎ話

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 彼の名前はリアム。この国の三番目の王子で、彼はまだ、10才になったばかりでした。  幼い王子には熱心な教育係がついており、読み書きから数学、歴史、経済学、政治学など、幅広く教え込まれていました。  王子としてのたしなみを、ということで、芸術や武術の稽古も毎日ありました。  彼はお城で勉強三昧の日々を、とてもつまらなく感じていました。  ある日リアムは、先生に聞きました。 「なんでこんなに勉強するの?」  すると、先生は答えました。 「立派な人になるためです。あなたのお父様や、お兄様のように。そのためには、たくさんの事を知っていなければいけません」  リアムは思いました。そんなに立派にならないといけないのか、と。  確かに、王国を治める父や、優秀な二人の兄を、リアムは尊敬していました。  しかし、リアムは不思議にも、彼らのようになりたいとは思いませんでした。 (僕はどうしたいんだろう……)  彼は自分の将来について、あまり想像ができませんでした。
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