第1章「はじまりの朝」

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「あっちー、これもう夏だわー」 「……声でかい。聞こえてる」 「うそ」  過酷な試練も不平不満も、じっと全てを黙って飲み込む。 「お前ら、おしゃべりの時間か今は」 「違います!」 「腕立て追加!」 「はいっ!」  暑いだの寒いだのきついだのの愚痴は、口にせず。  うっかり口先から漏れ出てしまったのが運悪く上官の耳はいったとしても、甘んじて全体責任を受ける。 「もー、腕が背中が胸筋が、無理」 「鬼だ、鬼」 「あちー」  航空自衛隊、航空学生。  彼らは将来のパイロット候補。  ここで指導を受け、訓練と学習を重ね、二年間の教育課程を通して成長して、いずれ日本の空を守るーー
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