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店には彬の他に誰も来ない。
静かな店内。
立花はすでに新聞の続きを読みだしていた。
小春の為に、何をプレゼントしようか迷う彬。
手にしては戻しを繰り返し、店の中を何度も回る。
ふと、カウンターの隅に置かれた物が目に入った。
まだ整理されていないのか、照明の灯りが当たらずに薄暗い場所に積み上げられていた。
その中で彬が目を奪われたのは、木製の柱と土台でガラスケースに入った女の子の市松人形であった。
人形の背面には、金色の厚紙が貼られている。
引き寄せられるように、彬は市松人形に近づいた。
赤い生地に花の刺繍が入った着物を着たおかっぱの女の子。
髪は艶やかな黒で美しく、その表情もまるで生きているかのようだった。
その可愛い市松人形が、小春によく似ていた。
人形には珍しく左目の下にホクロがあり、そこがまたそっくりだった。
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