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彬は気に入り、そのガラスケースを手に取った。
「立花さん!これにするよ」
新聞を読んでいた立花は、彬が手に取ったガラスケースの人形を見て、一瞬顔を強張らせた。
「それは、まだ売り物じゃないんだ。有名な人形職人が作ったものらしいのだが、まだよく調べていなくてね。価値もよくわからないのだよ。それに」
「どうにか売ってもらえないか。この愛らしい表情が、孫にそっくりなんだよ。下の孫は人形が大好きだから、きっと気に入る」
「うーん」
立花はしばらく悩んだ後、仕入れ帳に目を通した。
そこには、正木家の遺品と書かれていた。
「本当に、その人形を買うのかい」
「どうしてだい?」
「いや。それなら、五万でどうだろうか」
「五万でいいのかい? 有名な職人が作った人形なのだろう」
「いいよ。こんな日も当たらないところに置いておかれるよりはいいかもしれん」
「ありがとう」
彬は立花に人形代を支払うと、立花は人形のガラスケースを袋に入れた。
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