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彬はまた迷路のように大きな袋を持ちながら、駐車場に向かった。
歩くたびにカタカタと音がした。
彬は人形が倒れないかと心配しながら、慎重に歩いていった。
商店街を目前に、彬はふと思い出し携帯電話で電話をかけた。
相手は、妻である富士子だ。
「いい物が買えたから、これからそっちに向かう」
「はいはい。早く来てくださいね。みんな待ってますから」
「そうか。それは早く向かわないと」
「それより、一体何を買ったんですか? また、恭子さんが困るものじゃないでしょうね」
「困るものってなんだ。いいプレゼントを買ったよ。楽しみに待っていてくれ」
彬はそう言って電話を切った。
駐車場に着いた彬は、車の後部座席に人形が入った袋を置いた。
運転席に座ると、バックミラーに人形の入った袋が見える。
彬は人形が倒れないように慎重に車を走らせた。
バックミラーで袋を見る度、彬は小春の喜ぶ顔が目に浮かび微笑む。
「きっと、喜んでくれるはずだ」
彬の運転する車は、息子夫婦が新しく引っ越したマンションへ向かうのだった。
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