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「勘違いじゃねーって。あっ? なに食ってんだ。それ1番好きなやつ!」
皿からチョコエンゼルを強奪された晴太は、ひとり涼しい顔して外を眺めてる朋也に泣きついた。
「俺のエンゼルがなくなった! 朋也ー、おまえはトモダチだよな? 分かち合う心を持ってるよなっ?」
「んーどうかな。それより君、あれいいの?」
壁際のベッドに座っていた朋也が窓の外を指差す。
「え、なに?」
「そのキツネの女の子? キツネちゃんって、彰光から聞いたけど、ケモノ耳としっぽがついてるんだよね?」
「そうだけど? はっ、まさか俺よりハクにドーナツあげたいとかそういう?!」
さては口説く気か!
俺だったらドーナツ半分で落ちるのにっ。
「朋也ー、口説くんなら俺にしてー」
エンゼル食いたい。
ぱんと手を合わせて拝んだら、朋也が甘い目元を細めてほほ笑んだ。晴太の手の甲をするっと色っぽい手つきで撫で上げてくる。
(うひっ?!)
「セーイちゃん? いいから黙って外を見て?」
色気たっぷり、じゃなくて迫力満点だ。
産毛が残らず逆立った気がする。
「うは、ハイ」
晴太はべたっと窓に張り付いた。
窓のすぐ向こう、晴太の部屋が面する庭には大きな桜の木があって、枝の先端は窓から手を伸ばせば届きそうな距離だ。
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