本編3 かんちがい

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その間、わりと冷静にキツネの子を見ていた朋也は彰光と顔を見合わせた。 「あの子、まったく危なげなく立ち上がったように見えたんだけど」 子供が木に登っているのを見つけた時は驚いたし心配もしたが、全然平気そうだ。 「ちっこくても化けキツネなんだったら、むしろ俺らより身軽だろ」 と、彰光も同意する。 「そっか。なら、晴太はなんで焦って飛び出してったんだろうね?」 晴太の皿に残ってたドーナツを口に放り込んだ彰光が肩をすくめた。 「タヌキだもん、あいつ」 「なるほど、タヌキだからか」 ガラッ、バシーン! 裸足で玄関から走り出てきた晴太が、キツネの子が待ってる木に飛びつく。 「おーい、大丈夫かあ? ちゃんとつかまってろよー。ってこら、足ぶらぶらさせたら危ないの!」 晴太がわあわあ騒ぎながら登っていくのを、キツネの子が少し困ったような、でも嬉しそうな表情で見下ろしている。 晴太の心配でたまらないという気持ちを汲んで、ああして大人しく待っているのだろう。 「愛すべきタヌキに春が来たってところかな」 ほほ笑んで窓枠に腕をかけた朋也とは対照的に、彰光は「春の花はすぐ散るぜ」と素っ気ない。 朋也はくすっと笑って振り返った。     
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