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白兎は餅の葉で前肢を滑らせたらしい。
心細くて家の中をぐるっと見回したけど、ママもトーリもいない。この子タヌキだけだ。
キュワワン、と子タヌキが鳴いた。でも何と言ったのか分からなくて、白兎もキュン(なあに?)と鳴く。
見つめ合うことしばし。
子タヌキの前肢がそろりと動いて、魚の焼き物が乗った葉をつつーっと手前に引き寄せる。
白兎はそれをじっと見つめた。まるっと1匹焼いてあって、頭からしっぽまで姿がいい。こんな立派なのは、ウチにあった食べ物じゃない。きっと昼間のうちに大広場でこしらえたお祝い用のごちそうだ。ママとトーリも長いこと準備を手伝っていた。
(おサカナ・・・・)
獲れたても好きだし、塩を振って香ばしく焼いたのも大好きだ。
食べたくて口の中に唾が溜まったけど、見知らぬ子タヌキに近寄るのが怖くて、白兎は壁際まで下がってからそっと座る。でも目は子タヌキがかぶりついてる焼き魚に釘付けだ。
キュウン・・・。
白兎のウチなのに、白兎は緊張と怯えで小さくなってて、よそから来た子タヌキは夢中で魚をほおばっている。
(ママぁ)
鼻の奥がつーんとして、白兎はぐすぐす泣き出した。
(ぼくも食べたいよぅ。おなかすいたの、ママぁ)
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