1016人が本棚に入れています
本棚に追加
直後に聞き慣れた猛々しい咆哮が空高く響いた。
強大な妖気がぶわっと周囲に満ちる。
(ウル兄・・・!)
斜面の上から威風堂々と現れた銀のオオカミが、大キツネを激しく追い立てる。
激突を繰り返しながら二頭とも樹林の奥に消えていき、晴太はへなへなと力を抜いた。
「おーい晴太、ちびってねーだろうな?」
斜面の上から、先に救助されたらしい彰光が慎重に下りてくるのが見えた。
キャワワン(助かった、怖かったー)。
「ふえ・・・・」
タヌキを抱っこしたキツネの子が、たまらなくなったように涙をこぼし始める。
(うあー、泣いちゃったよ)
カッコよく助けられなかったどころか、ギャアとか叫んで腰まで抜かした晴太は、バツが悪くて顔を上げられなかった。抱えてくれている手に鼻をこすりつけて、ペロペロ舐めるのが精いっぱいだ。
「・・・・セイタ?」
まだひどく震えている声に、胸がきゅうっとなる。
キャワン。
(大丈夫か?)
タヌキの言葉は通じないだろうけど、心配してるのはきっと伝わるはずだ。
「これって夢・・・?」
(夢じゃないよ、助かったよ)と抱っこしてくれてる手をペロッと舐めたら、ポロポロッと涙が降ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!