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本編3 かんちがい
土曜の午後。
彰光と朋也がお見舞いに来てくれた。
「は? ヨメ?」
「そ、嫁!」
「ヨメって、嫁姑のヨメ?」
「そう、その嫁だって! キツネのお嫁さん」
「はっ、おまえにヨメぇ?」
母屋の二階にある晴太の部屋で、彰光とふたりしてヨメヨメ言ってたら、朋也が吹き出した。
「君らコントの練習でもしてんの? それならオチつけてくれないと」
「いやこいつがアホすぎて話進まねーだけ」
彰光に親指で示された晴太は、ガシッとその指を握って指相撲に持ち込んだ。
「えいやっ! 見舞いに来といてアホはないだろ。俺ちゃんと説明したじゃん」
「どこがちゃんとだ。あのキツネちゃんが会ったことあるキツネで、お嫁に来ましただあ? 意味わかんねぇ」
中腰になった彰光が親指を力ずくで引き抜いて応戦してくる。晴太も腰を入れて握り合った右手に気合を込めた。
「うぐぐ。だってホントだし。なんか変態チカン野郎から逃げてきたってー、あ、いてっ、いででででっ」
「変態から逃げてきて勘違いタヌキに捕まったってか。8、9、10、はい俺の勝ちー。おまえのドーナツもーらい」
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