本編2 なまえ

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本編2 なまえ

キツネの子は、気丈にがんばった。 オオカミに先導されて山を下りる間、『オオカミ怖い』って顔して怯えながらも、タヌキに変化したせいで頭の傷が広がってしまった晴太をずっと抱っこして歩いてくれたのだ。 ちなみに、ピンチの晴太達をシビれるほど格好良く助けたオオカミは晴太の次兄、雨瑠(うる)だ。 町より山にいる方が多く、『るせーな、山ん中で騒いでやがんの誰だ、シバくぞ』と思って見に来たらマヌケ面さらした弟だったらしい。 他界した両親は父がタヌキで母がオオカミだったから、末っ子タヌキの兄がオオカミでも別におかしくないのだ。 逆に、混じって生まれてくることはまずない。 山と町を分断する川に架かった橋を渡ったあと、彰光はペコを連れて飼い主のところへ戻り、怪我をした晴太とボロボロのキツネの子は診療所に放り込まれた。 そんなわけで、晴太はかなり悲惨な目に遭ったのに、ペコの美人な飼い主さんの笑顔をもらい損ねたのである。
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