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階段を下りきると、それまでの暗闇が嘘の様に、科学的な白い光が私を包んだ。これだけ明るければ自前の灯りは必要ないので、ハーネスのスイッチをオフにする。
ハンドル式のハッチが鏡みたいに光を反射する。廊下やハッチに汚れは全く無く、人の気配も感じさせなかった。ハンドルを捻ってハッチを開けると、身を突き刺す様な冷気が溢れてきた。食料庫だ。
中には缶詰やその他食糧がズラリと並ぶ棚が何十個もあった。前までは入り口側の物から適当に取っていっていたが、奥の方にはまだたくさんある。Elizabethももうここらのものには飽きただろうから、今日は奥を探ってみることにした。
奥まで行ってまず視界に入ったのはミネストローネ缶だった。パッケージには"野菜沢山"とあり、その通り色々な種類の野菜とコンキリエがトマトスープに浮かんでいた。旨そうだったが、Elizabethはトマトが嫌いだからこれは無し。
隣にあるコンソメスープはどうだろう。明るく透き通った橙色のスープに玉ねぎや刻んだセロリ、ニンジンが浮いている。奥の方から数個程缶を取った。それからスープ缶のある棚を離れて、十数分程食べ物を物色した。
暫くして、お暇するには良い頃合いになった。スープ以外には、乾パンだのクラッカーだの燻製肉だの、背中のリュックがパンパンにならない程度にたくさん食糧を詰め込んだ。 ハッチのハンドルをしっかりと閉めて食糧庫を後にする。 階段を上りながらハーネスのスイッチをいれ、黄色掛かった光で上階を照らした。今度はふざけずに、黙々と上り続けた。靴が鉄を叩く音が一定のリズムを刻んでいた。
廊下を進み、再び瓦礫の積もったホールまで戻ってきた。 そのまま玄関へ向かおうとする所、突然私の頭上からゴロゴロという音が聞こえてきた。時々黒雲には光と轟音と共に稲妻が走ることがあるが、今回のものは忌々しいcreatureが喉を鳴らす時のものに近かった。私は瞬時に側にあったソファの陰に隠れ、天井の穴を窺った。
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