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 彼らの姿形には色々な種類がある。目があるもの無いもの、大きな顎を持つもの、触手をもつもの。 それら全てに共通するのは私という、彼らから見た異形に対して敵対的だということだ。だから私はもしもの時の為に、銃というものを携帯している。鉛を火薬の力で撃ち出す仕組みなのだが、これは本当に便利なものである。奴らを殺すのにこれほど適した道具を私は知らない。 アイツら同士でどのように同族を識別しているのかは実のところ分からない。私のような人型のcreatureはこれまでに見たことが無いので、案外単純なのかもしれない。 creatureは一つの例外もなく、夜間に睡眠に入ることがElizabethによって証明されている。だから私は夜を狙って外へ赴き、自由に動けない彼女の為の物資を取ってくるのだ。  さて、一人でつまらない話をしていても仕方無い。そろそろ外へ出よう。 持っていくものは、非常時の水や携行の容易な拳銃に弾薬、そして小さいナイフ。充電式のライト付きの小さなリュックサックを背負い、厚手の丈夫なコートを羽織る。今回は必要無いが、まだ放射能の残留する地域に赴く場合は、ガスマスクも忘れない。 こうして万全の準備を整えてようやく地表へ出ることになる。 いつも使う部屋を出ると居間に出て、壁に掛けられたランタンの光に照らされた初老の女性が視界に入る。長い白髪を後頭部でまとめ、丸レンズの眼鏡を掛け、物静かそうな雰囲気を纏う女性だった。もう白衣とは呼べぬ程薄汚れたボロ着の下には、毛糸製の色鮮やかな服を着て、木の椅子に腰掛けて手慰みに何かを編んでいた。私が部屋に入ったのに気付くと、その柔らかな視線をこちらに向け、「行くのですか」と静かに言った。私はこくりと頷いた。それに対してElizabethは「そう」と反応を返し、編み糸と縫い針を机に置いて、こちらへ向き直った。 「何かありましたか」と私は聞いた。私に何らかの話があるから、彼女はこちらを向いたに決まっていた。 彼女は変わらず柔らかい雰囲気を帯びたままこちらを見つめ返した。Elizabethの眼はその見た目に反して澄んだブルーグレイで、彼女自身は未だ賢く、聡明であることの証明のように思えた。 「私はもうすぐ死にます」 そう言った彼女の表情は、いつもより増して寂しげだった。
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