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居間のドアを閉じて、前へ向き直る。目の前には物々しい重厚な金属製の扉、その脇には緑の通電ランプの点いたスイッチがあった。薄暗く光るそれをオンにすると、何重にも施された鍵が十数秒程掛けて開く。ガチャガチャという小気味良い音が止み、鍵が開ききったら、巨大な閂が引き抜かれ、腹に響く重い音を上げながら扉が開かれた。
その奥へ進むと梯子があった。手を掛けて上を見ると、十メートル程先に円形のハッチが見え、白熱電球が一定の間隔ごとに設置されていた。呼吸を整えて速やかに駆け上がる、下は見ない。カツカツと私の靴がリズムを奏でる。Elizabethが持っていたICレコーダーに保存されていた音楽を思い出す。自分のお気に入りの曲のテンポに合わせて昇ろうかとも思ったが止めた。
ハッチの真下に着いた。一息ついてからハッチのロックを外す。レバーを引いて、力一杯に上へ上へと扉を押し上げた。
隙間から眩い月光が射すことは無く、やはり空に果てしなく広がるのは黒雲だった。いつもと変わらない空を見上げ、二回の深呼吸。その後ハッチの縁を掴んで、私は地表へと体を乗り出した。
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