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街に着いた。
歩いてきた道を振り返る。周りは自分が来たような道のアクセスがあるだけで、ほぼ砂漠に近い状態だった。
昔は沢山の人間が住み、物が流通し、それは賑やかな街だったらしいが、今は見る影もない。核爆発の影響で色々と吹き飛んでしまってる様だった。あるビルは抉られたように鉄筋を剥き出しにし、あるビルの双子は互いに半ばでへし折れている。片方は車の放置された大通りに横たわり、もう片方は隣のビルとハイウェイに頭を突っ込んでいた。
この景色も見慣れたものだ。この街の建物はほぼ探索し尽くしたと言って良いくらいで、物資の在処は大抵把握していた。一応まだ物資は余らせているが、そろそろ新しい補給地を探さなくてはならない。街の向こうはまだかなり高いレベルの放射能が残っていて、あの日核が落ちた所なのだと推測出来た。街の向こうへ赴くのはなるたけ避けて、違う方角へ足を運ぼうと考えていた。
取り敢えず暫くはこの街で済ます予定だ。まだ余った食料が残っていたと記憶している、街の中央の廃屋へ向かうことにした。
折れたビルが向かいのビルに倒れかかり、トンネル上になっている下を歩く。初めここを通った時は、この崩壊したビルがいつか落ちてこないか不安になったものだが、最近はもう気にしなくなった。ここが今から向かう所への一番の近道と知っているから通るのを止められないし、寧ろ落ちてきたらその時はその時だと思うようになった。 慣れとは恐ろしいものだ。
ビル街の中、突然レンガで出来た高い塀がライトに照らされる。それを辿った先に、件の廃屋はあった。やけに御大層な門の前まで来て先を見ると、所々欠けてなくなったセラミック製の噴水や、葉の無い痩せ細った倒木の遺された広大な庭が広がっていた。その庭を横断するように一本の道が廃屋、と言うより廃館へと引かれている。ひしゃげて打ち捨てられている金属のゲートを横目に見ながらアーチをくぐる。道の両端のレンガ塀は上の方が崩れてきていたので、道の真ん中を歩くよう努めた。
そうして館の扉前まで来た。見た目はかなり立派で、戦前は社会的地位の高い者が住んでいたと予想出来る。窓ガラスは無く、全体が劣化して穴も空いていたが問題は無かった。この館の下には地下室があり、そこにたくさんの物資が残されていたのだ。
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