第一章 本の世界の彼と私

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菜穂から解放されてすぐ図書館まで戻ってみたけれど、すでに閉館してしまっていた。 帰る道すがら、あたりを見回してみても、彼の姿は結局見当たらなかった。 私は帰りの電車に揺られながら、彼のことをずっと考えていた。 本の世界を一緒に辿ってほしいと言ったのに、なぜ急にいなくなってしまったんだろう。 私はあの世界に描かれた場所に行きたいと思っていた。 その場所で彼と彼女が過ごしている様子を想像すると、真昼の陽だまりの中にいるみたいに、心が自然とあたたかくなるから。 『……彼女と似ていたから』
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