432人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
菜穂から解放されてすぐ図書館まで戻ってみたけれど、すでに閉館してしまっていた。
帰る道すがら、あたりを見回してみても、彼の姿は結局見当たらなかった。
私は帰りの電車に揺られながら、彼のことをずっと考えていた。
本の世界を一緒に辿ってほしいと言ったのに、なぜ急にいなくなってしまったんだろう。
私はあの世界に描かれた場所に行きたいと思っていた。
その場所で彼と彼女が過ごしている様子を想像すると、真昼の陽だまりの中にいるみたいに、心が自然とあたたかくなるから。
『……彼女と似ていたから』
最初のコメントを投稿しよう!