第一章 本の世界の彼と私

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文乃(あやの)!」 名前を呼ばれて振り返ると、友人の相沢(あいざわ)菜穂(なほ)が立っていた。 マスカラをたっぷりと塗って目を大きく見せている菜穂は、その濃いメイクには少し似合わないTシャツを着ている。 そのTシャツの柄はさっきから何度も見てきたものと同じ。 「菜穂、相談役を引き受けたんだね」 私は少し声を落として言う。 「文乃は? 教授から頼まれてたよね」 「んー、断っちゃった」 菜穂に苦笑いで返す。私には相談役なんて引き受ける資格はない。 私も菜穂も、この大学の一年生。 オープンキャンパスでは、進学を希望している高校生たちの相談を一年生が受けることになっている。
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