第一章 本の世界の彼と私

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打楽器や管楽器によるマーチが遠くから聞こえてくる。 音の源である中央広場まで辿り着けば、真夏の暑さに負けないくらいの熱気を帯びた空間が、私を待ち受けていた。 熱気の中心には長袖学ラン姿の男子大学生ときらびやかなボンボンを持ったチアリーダーの女子大学生たち。 彼らはマーチに合わせて大学名を連呼しながら手を振り上げている。 それを楽しそうに眺める高校生たちはみんな、未来への期待と希望の光が宿っているようだった。 その集団を見ているのがつらくなり、逃げるように講堂の中へと入った。だけどそこも人が列をなしていて、げんなりしてしまう。 今日、大学に来たのは失敗したかな……。 小さくため息が零れたそのとき。
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