最後に『ババ』を引いたのは

1/4
前へ
/103ページ
次へ

最後に『ババ』を引いたのは

オーバンはラルセーのキュレーターとして、もう30年近くを研究室で過ごしている。 その技量と実績は高く評価されているものの、如何せん偏屈な性格が災いして出世とは無縁と言えた。 その点、上層に取り入るのが上手いカロンの方が、出世コースに乗っていると言えたが‥‥ 「ふふん、それももう終わりだな‥‥」 静かな研究室の一角で、オーバンがふと呟く。 「あれだけの大失態だ。『大儲け』し損ねたようだしな。アルフレッドからの信任も失せただろう。まぁ、お陰でアルフレッドの『定年延長』も有り得んだろうし。その後釜に、あの小賢しいカロンが座ることもあるまい‥‥なら『次』の館長は私以外に候補者は居ないだろう。ふふふ‥‥」 そして、人目が無い事を確かめからニタリと笑う。 「全く‥‥カグラは良く働いてくれたものだ。私としても可能な限りの情報は出して『焚き付けた』つもりだが‥‥本当に、期待以上に良くやってくれたよ。感謝しないとな‥‥はははは‥‥」 「しかし‥‥本当に『2億円』で良かったんですか?」 神楽は、蛇道の喫茶店に来ていた。 「『迷惑料』とか‥‥もう少し取れたかも知れませんよ?」 恐る恐る尋ねるが。     
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加