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「‥‥前置きゃぁいらねぇ。挨拶も不要だ。オレが聞きてぇのは『事業計画』、ただそれだけだ。それを聞いてオレが『面白れぇ』と思ったら、それから名乗りな。つまらんヤツの名前なんざ、聞きたくもねぇからよ」
それが第一声だった。
痩身ゆえからなのか、決してドスが効いた声ではないが。しかしそれでも、充分な威圧を感じずにはいられなかった。
「わ、‥‥分かりました‥‥」
身体の震えが止まらない。
何しろ相手は『只の街金業者』ではない。
俗に『闇金』と言われる違法な貸金業者の中でも、更に『異端』として一目置かれる男なのだ。
『事業計画』‥‥そう言えば聞こえは良いが。
この男に持ち込まれる『案件』は決して真っ当なモノではない。
『麻薬の大量購入』『象牙など違法な輸入品の買い付け』『武器弾薬の輸入』‥‥等々。
そうしたキナ臭い取引において『億単位の現金』が必要なとき、彼の出番となる。
ただし。
その返済は『1年以内で、金利は元本同額』。すなわち、1年以内に倍額にて返済するのが彼のルールだ。しかも『1億円単位』でしか融資を受け付けない。‥‥とても『マトモな事業』が相手の融資ではないのだ。
それ故『蹴られる案件も少なくないから覚悟しとけ』と、紹介者からは聞いている。
「あ、あの‥‥」
言葉に詰まる。
「‥‥まず、結論を言いな?結論を‥‥細かけぇ話はその後だ。何をして『儲ける』つもりなんだ? 一言で言え」
男は横を向いたまま、神楽を促す。
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